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あれはなんだ かたちは無く

ギターの気付記 右手のフォームと音色特集

正確にはフォームというほどではないが、個人的に丁度良い右手の形について。

 

演奏スタイルはソロギター、利き手(主にメロディーを奏でる手)は右手と想定した上で、丁度良い右手の形というものがある。もちろん手の形は人それぞれ違うから、右手の形もまた、人それぞれ違っている。ここで、丁度良いというのは、なるべく手に負担を掛けずに、演奏に必要な力を入れることが出来るということを意味している。

ソロギターの場合、主に右手のどの部分を使っているのだろうか?指の力はもちろん大切だし、関節の柔らかさもある程度要求される。自分の思うに、ソロギターでよく使っている右手の部分は、掌の筋肉である。もちろん、例えばピアニッシモで演奏するときは指先を主に使うが、大体の場合は掌に込める力を加減して演奏するのが一番表現しやすい。自分のフォームではなぜ右手の掌の筋肉を主に使っているのかを考えたると、単純に、自分の好きな音を追及している、という事実に思い当たった。

 

まず、自分の好む撥弦方法は、文字通り「はじく」ことである。手を少し開き気味にして弦の上に乗せ、少し肉をひっかける。そして、そのまま手を握りこむようにして、抵抗力を利用してギターと反対側に手を軽く引く。これが「はじく」である。

なぜこんな回りくどい表現をしたかというと、ギターでは、弦をはじくと表現をしても、実際には何通りかの方法がある。例えばクラシックギターや音の大きなギターでは、弦をなでるようにして音を出したり、アコースティックギターや音の小さなギターでは、反対に弦を抜くようにして音をだしたりすると、それぞれ気持ちの良い音がすることが多い。要は、ギターの特徴に合わせてこちらで音色を試し、バランスがとれたと思う位置で引くだけのことだ。

さて、自分のギターは音が大きい方だが、倍音が少なく純音的な音を鳴らすので、結果的には音がやや小さくなっている。そのため、自分の「はじく」動作を指の力だけで行おうとすると、指の腱に掛かる負担が大きく、とても数時間も演奏していられない。(話が反れるが、ピアノだって、指の力だけで弾いているのではなく重力も利用しているのだ。)そこで、掌の力を使うと、指にかかる力はより少なくてすむ上に、筋肉がまとまっているから、引き抜く方向も一方向にまとまって、反発力を利用しやすくなる。ところで自分は指の力が極端に弱く、普段字を書くのに万年筆を使っているほどである。もう少し強ければ、また違っていたのかもしれない。

 

次に、指の腹と弦の角度による音色の違いを安定してコントロールすることにも関係がある。ソロギター奏者は右手の爪を長めに伸ばして弾くことが多いそうだが、自分は爪を適度に短く切って演奏している。理由は単純で、前述の通り音量を出すためには強めに弾いたり指をひっかけたりする必要があるので、爪が長いと引っかかったり欠けたりして邪魔だからである。

ここにポイントがあるのだが、逆に言うと、引っかかるような弾き方をしている、ということでもある。具体的には、親指は曲げずにまっすぐに伸ばし、付け根から動かす。なるべく動きを平行に近づけることで、低音弦の倍音を増やすことができる。一方、残りの4本の指は、弦にそのまま当てるのではなく、指を曲げて、肉を少しひっかけるようにしている。このとき、肉は掌から見て向かって右、爪の端から2~3mmのところを使っている。このように手の形を作ってみるとわかりやすいが、必然的に、指の力よりも掌の力の方を利用するのが自然な形になっているのだ。

 

最後に、ピックを使った演奏とは違って、右手首をあまり利用しないということが挙げられる。正確に言うと、弛緩と緊張を細かく往復するときには、右腕に掛かる力を肘の上あたりまでにとどめておき、腕とギターの間には余裕を持たせ、そして右手の力だけで演奏しているということだ。ちなみに、この形に慣れすぎていると、ピックでの演奏が急に難しくなることもある。

この形にはもう一つ利点がある。肘の上までに力を加えることができるので、椅子に座って引く場合も、経って弾く場合も、ギターをしっかりと固定することができるのだ。そのため、右手は演奏することに注意を向けさえすれば良い。そして、それが音色の安定に繋がればなお良い。

 

たった一つ右手のことを書くために、どうしてこんなに字数を割くことになったのかはよくわからない。だが、実際には見た方が早いということはわかる。そして、実際にはほとんど無意識にフォームに取り入れていて、こうして機会を持ちでもしなければ、言葉にしようと思わなかっただろうことも。